繰り返す石ころ

世の中ってたのしい

読了『入門 組織開発』

『入門 組織開発』を読んだので、その感想でも。
「組織開発ってどんなものですか?」と聞かれた時に、さっと渡せる本がないかなーと思って手にとってみました。
前回書いた対話型組織開発の訳者をした中村先生による、組織開発の入門書です。

入門 組織開発 活き活きと働ける職場をつくる (光文社新書)

入門 組織開発 活き活きと働ける職場をつくる (光文社新書)


この本では、組織開発についてざっと理解することができます。
小難しそうですが、専門用語がいきなり出てきて意味分からなくなるなんてことはなく、分量的にも内容的にも手に取りやすいものになっています。
組織開発の国内外の歴史から、在り方や考え方、手法まで広くカバーしていますが、あまり実践に振り切らずに広く俯瞰するための本です。

著者の意図としては、新書という手軽に読める本の形態で、広く組織開発への関心を集めたいということなのでしょう。実践まで深入りすると100%新書で出せるボリュームには収まらないので、この割り切りは英断です。
本書で繰り返し述べられているように、組織開発は手法よりも"在り方"なので、変に入門で手法から理解するより良いのではないでしょうか。
本書からは、在り方ではなく組織開発の手法ばかりが先行していることへの著者の憤りが相当に感じられます。この本が2015年に出版されて数年が経過していますが、現在も大きくは変わっていないのではないでしょうか。
しかし、こうした組織開発の本が多くなることで、私含め、少しずつ後進の意識は変わっていくものだと信じています。

さて、 組織開発は非常に広範囲な手法や考え方を内包しています。そのため、「組織開発とは何か」の定義は様々なものを見かけます(私が人に説明する時の素人すぎる語りも…)。
本書によれば、組織開発の定義の共通項として多いのは「行動科学の理論や手法を用いること」「組織の効果性や健全性を高めていくこと」「組織のプロセスに対して計画的な働きかけをする取り組みであること」の3点のようです。

紹介されている定義を1つ紹介すると、「組織開発とは、組織の健全さ、効果性、自己革新力を高めるために、組織を理解し、発展させ、変革していく、計画的で協働的な過程である」というウォリックの定義。
健全さは、仕事生活の質、お互いの関係性の質、権力の最適なバランス、ワークモチベーションの高さなど、組織内の人々の「幸せ度」と関連します。
効果性は、組織の目標に到達する力、組織の構成員やチームの潜在力を発揮できること、環境の変化に適応し対処できることを指しています。
自己革新力は、絶えず学び続け、(組織開発の専門家の支援がなくても)組織を自分達で変えられる力です。

社会情勢を考えると、非人間的な経済的合理性に振り切っていた世界から、働き方改革等を通してゆるやかに組織の効果性に目が向けられてきています。また、多様な人と多様な意見の相違を繰り返しながらも、組織の健全さや自己革新力にも注目が集まってきていると感じます。
私としては、組織の中の一人一人が自分達でバランスを見ながら良くしていける組織が増えることで、人々が豊かに幸せに暮らせる、そんな世界が作れたらと思うばかりです。

かなり脱線してしまいました。
本の話に戻ると、この本で概論を学んだ後の実践のために2冊目が必要なのですが、次は何をオススメすべきか悩ましいところです。あまりに手法が広いので、ここでサッと出せる日本語の良書は思いつきません。
組織開発の手法は多岐に渡るので、やはり地道に本書に書いてある気になるキーワードをAmazonで探して読むのが良いのかも…。
本書の著者である中村先生と、人材育成の分野で有名な中原先生が共著で組織開発の本を10月頃に出されるそうで、そちらにも期待したいですね。

ここ最近は、組織関連のニーズと、それに合わせて情報の供給の厚さがどんどん増しているように思います。
学び時として、今は良いタイミングなのかもしれませんね。